【法廷ライブ SS元船長求刑】(1)
《環境保護を標榜(ひょうぼう)する米団体「シー・シェパード(SS)」のメンバーによる日本の調査捕鯨妨害事件で、艦船侵入や傷害など5つの罪に問われたSS抗議船「アディ・ギル号」元船長、ピーター・ジェームス・ベスーン被告(45)の第4回公判が10日午後1時30分、東京地裁(多和田隆史裁判長)で始まった。反捕鯨の名の下に、過激な暴力的妨害を繰り返してきたSSの行為を裁く一連の公判も終盤にさしかかろうとしている。この日は、検察側のベスーン被告に対する論告求刑と弁護側の最終弁論が行われ、結審する予定だ》
《ベスーン被告は今年2月、南極海の公海上で調査捕鯨中の捕鯨船団に、酪酸(らくさん)などを投げつけて、乗組員にけがを負わせたとして傷害罪で起訴されているほか、その後、日本船にナイフを隠し持ったまま侵入したとして艦船侵入罪などにも問われている》
《公判で、ベスーン被告は艦船侵入罪などの起訴内容について大筋で認めているが、捕鯨妨害で酪酸入りの瓶を投げたことについては、「いかなる人にも傷害を負わせる意図はなかった」と強調。弁護側も傷害罪の適用について、争う姿勢を見せている。公判の最大の争点は、捕鯨妨害で行った行為が傷害罪に当たるかという点だ》
《法廷は前回までと同じ426号法廷。ベスーン被告本人に対する被告人質問とあって、開廷前には21枚の傍聴券を求め、279人が列をつくった》
裁判長「それでは被告を入廷させてください」
《午後1時29分、多和田裁判長が告げる。ベスーン被告がゆっくりと法廷脇の入り口から入ってくる。スキンヘッドに黒っぽい上下のスーツ。表情は険しい。係官に手渡された通訳の声が聞こえるイヤホン機具を耳に付け、弁護人席の前の長いすに座る。裁判官席下には、書記官と並んで通訳が座っている》
《前回は、公判途中に傍聴席からSSの捕鯨妨害に反発するような不規則発言が飛び出したため、法廷内にはピリピリとしたムードが漂う》
裁判長「審理の最中に法廷や近くの廊下で不規則発言をしたり、不穏とみられる動きをしたりしたら、すぐに退廷を命じます。秩序を乱す行為をした場合、(身体の)拘束を命じることもあります」
《多和田裁判長は傍聴人に一言注意をすると、開廷した》
裁判長「弁護人が追加の証拠請求があるようですが、検察官のご意見は?」
《弁護側は、ベスーン被告がSSから除名されたことを伝えるネットニュースの記事を、証拠請求しているようだ》
検察官「証拠に同意、不同意を表明にするにあたり、簡単に被告人質問させてください」
裁判長「わかりました」
《裁判長に促され、ベスーン被告が証言台に立つ》
検察官「あなたがシー・シェパードから除名処分になると報道されていますが、除名処分を受けたのですか」
被告「そうだと思います」
検察官「『そうだと思います』というのは? あなた自身が処分を受け取っているのですか」
被告「いいえ。接見したジャーナリストから聞きましたし、きょう弁護士からも聞きました。昨日、2人のジャーナリストと接見しました」
検察官「(捕鯨妨害現場に)弓矢を持ち込んだのが理由のようですが、それはアディ・ギル号(運航)の初期の段階から公然の事実だったのではないですか」
被告「アディ・ギルの船員は知っていましたが、ほかの船員は知らなかったはずです」
検察官「でも、(SSの捕鯨妨害に密着取材していたマスコミの)アニマル・プラネットのクルーには説明していますよね」
被告「そうです。彼らがアディ・ギルに乗り込んでいたカメラマンです」
検察官「処分に納得しているのですか」
被告「そういった決断については尊重しているし、受け入れます」
検察官「弓矢について(SS代表の)ポール・ワトソンは知っていたのではないですか」
被告「それは違うと思います」
検察官「確認しますが、除名は受け入れるのですか」
被告「はい、受け入れます」
《「SS除名を受け入れるか」という質問に、はっきりと「はい」と答えたベスーン被告。傍聴席から表情はうかがえない。質問が終わったので、裁判長が検察官に、改めて証拠採用について意見を求めた。検察官が「同意します」と答えたため、証拠は採用された。次に検察官が論告の読み上げを始める》
検察官「公訴事実は法廷において取り調べ済みの関係証拠によって、証明は十分である。弁護人は『被告人の行為と被害者の傷害結果との間に因果関係はない』と、(傷害罪について)無罪を主張し、『銃刀法違反罪についても自首が成立する』と主張し、被告人も同様の主張をするので、念のために、以下、検察官の意見を述べる」
《検察官は、そう言って、改めてSSの捕鯨妨害の概要を述べた。今年2月、ベスーン被告がランチャーで酪酸入りのガラス瓶を妨害監視船「第2昭南丸」に打ち込み、乗組員にやけどなどの負傷を負わせたとする起訴内容も詳しく説明。そのうえで、ベスーン被告が酪酸入りの瓶を打ち込んだ行為と乗組員の負傷に因果関係があると強調していく》
検察官「被告人の行為と負傷に因果関係があるのは明らかである。被告人がゴムボート上からランチャーで酪酸入りの瓶を発射し、第2昭南丸船橋部に激突させ、破裂した直後に、乗組員はほおや目の痛みが生じたため、直ちに船内で真水で洗い流すなどした」
「乗組員は相互に符合する証言をし、酪酸入りのガラス瓶が第2昭南丸船内で破裂した直後に、目やほおの痛みが発生し、それとほぼ同時に酪酸特有の悪臭をかいだことなど、被告人が打ち込んだ酪酸によって負傷した状況を明らかにしている」
「乗組員が撮影した動画に、『大丈夫か』『酪酸だ』などと船内が騒然とした状況、船内のシャワールームで(被害者が)痛みや悪臭をこらえて洗浄している姿が記録されている」
《さらに検察官は、弁護側の主張を引用しながら、その内容を否定していく。ベスーン被告はじっと話を聞いているが、ときおり、傍聴席の方をみる。誰かを捜すように、傍聴人たちの方をぐるりと見回す。その顔は、少し赤らんでいた》
検察官「弁護人は、酪酸は無害な物質で、ガラス瓶の激突地点から直線距離で8・8メートルも離れた距離で、間には船橋甲板もあるのに、○○(乗組員の実名)に酪酸が付着するのは不自然と主張する…」
「しかし、これらの主張は失当である。酪酸が強い腐食性を有する非常な危険な液体であることは明らか。飛散した甲板の塗装は変色していた」
「船上では、船首から船尾に向かって約12ノット(約6・2メートル)の風が吹いている状況で、風の影響で飛散し、船橋甲板から下の上甲板上に達することも社会通念上、合理的に理解できる…」
=(2)へ続く
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《ベスーン被告は今年2月、南極海の公海上で調査捕鯨中の捕鯨船団に、酪酸(らくさん)などを投げつけて、乗組員にけがを負わせたとして傷害罪で起訴されているほか、その後、日本船にナイフを隠し持ったまま侵入したとして艦船侵入罪などにも問われている》
《公判で、ベスーン被告は艦船侵入罪などの起訴内容について大筋で認めているが、捕鯨妨害で酪酸入りの瓶を投げたことについては、「いかなる人にも傷害を負わせる意図はなかった」と強調。弁護側も傷害罪の適用について、争う姿勢を見せている。公判の最大の争点は、捕鯨妨害で行った行為が傷害罪に当たるかという点だ》
《法廷は前回までと同じ426号法廷。ベスーン被告本人に対する被告人質問とあって、開廷前には21枚の傍聴券を求め、279人が列をつくった》
裁判長「それでは被告を入廷させてください」
《午後1時29分、多和田裁判長が告げる。ベスーン被告がゆっくりと法廷脇の入り口から入ってくる。スキンヘッドに黒っぽい上下のスーツ。表情は険しい。係官に手渡された通訳の声が聞こえるイヤホン機具を耳に付け、弁護人席の前の長いすに座る。裁判官席下には、書記官と並んで通訳が座っている》
《前回は、公判途中に傍聴席からSSの捕鯨妨害に反発するような不規則発言が飛び出したため、法廷内にはピリピリとしたムードが漂う》
裁判長「審理の最中に法廷や近くの廊下で不規則発言をしたり、不穏とみられる動きをしたりしたら、すぐに退廷を命じます。秩序を乱す行為をした場合、(身体の)拘束を命じることもあります」
《多和田裁判長は傍聴人に一言注意をすると、開廷した》
裁判長「弁護人が追加の証拠請求があるようですが、検察官のご意見は?」
《弁護側は、ベスーン被告がSSから除名されたことを伝えるネットニュースの記事を、証拠請求しているようだ》
検察官「証拠に同意、不同意を表明にするにあたり、簡単に被告人質問させてください」
裁判長「わかりました」
《裁判長に促され、ベスーン被告が証言台に立つ》
検察官「あなたがシー・シェパードから除名処分になると報道されていますが、除名処分を受けたのですか」
被告「そうだと思います」
検察官「『そうだと思います』というのは? あなた自身が処分を受け取っているのですか」
被告「いいえ。接見したジャーナリストから聞きましたし、きょう弁護士からも聞きました。昨日、2人のジャーナリストと接見しました」
検察官「(捕鯨妨害現場に)弓矢を持ち込んだのが理由のようですが、それはアディ・ギル号(運航)の初期の段階から公然の事実だったのではないですか」
被告「アディ・ギルの船員は知っていましたが、ほかの船員は知らなかったはずです」
検察官「でも、(SSの捕鯨妨害に密着取材していたマスコミの)アニマル・プラネットのクルーには説明していますよね」
被告「そうです。彼らがアディ・ギルに乗り込んでいたカメラマンです」
検察官「処分に納得しているのですか」
被告「そういった決断については尊重しているし、受け入れます」
検察官「弓矢について(SS代表の)ポール・ワトソンは知っていたのではないですか」
被告「それは違うと思います」
検察官「確認しますが、除名は受け入れるのですか」
被告「はい、受け入れます」
《「SS除名を受け入れるか」という質問に、はっきりと「はい」と答えたベスーン被告。傍聴席から表情はうかがえない。質問が終わったので、裁判長が検察官に、改めて証拠採用について意見を求めた。検察官が「同意します」と答えたため、証拠は採用された。次に検察官が論告の読み上げを始める》
検察官「公訴事実は法廷において取り調べ済みの関係証拠によって、証明は十分である。弁護人は『被告人の行為と被害者の傷害結果との間に因果関係はない』と、(傷害罪について)無罪を主張し、『銃刀法違反罪についても自首が成立する』と主張し、被告人も同様の主張をするので、念のために、以下、検察官の意見を述べる」
《検察官は、そう言って、改めてSSの捕鯨妨害の概要を述べた。今年2月、ベスーン被告がランチャーで酪酸入りのガラス瓶を妨害監視船「第2昭南丸」に打ち込み、乗組員にやけどなどの負傷を負わせたとする起訴内容も詳しく説明。そのうえで、ベスーン被告が酪酸入りの瓶を打ち込んだ行為と乗組員の負傷に因果関係があると強調していく》
検察官「被告人の行為と負傷に因果関係があるのは明らかである。被告人がゴムボート上からランチャーで酪酸入りの瓶を発射し、第2昭南丸船橋部に激突させ、破裂した直後に、乗組員はほおや目の痛みが生じたため、直ちに船内で真水で洗い流すなどした」
「乗組員は相互に符合する証言をし、酪酸入りのガラス瓶が第2昭南丸船内で破裂した直後に、目やほおの痛みが発生し、それとほぼ同時に酪酸特有の悪臭をかいだことなど、被告人が打ち込んだ酪酸によって負傷した状況を明らかにしている」
「乗組員が撮影した動画に、『大丈夫か』『酪酸だ』などと船内が騒然とした状況、船内のシャワールームで(被害者が)痛みや悪臭をこらえて洗浄している姿が記録されている」
《さらに検察官は、弁護側の主張を引用しながら、その内容を否定していく。ベスーン被告はじっと話を聞いているが、ときおり、傍聴席の方をみる。誰かを捜すように、傍聴人たちの方をぐるりと見回す。その顔は、少し赤らんでいた》
検察官「弁護人は、酪酸は無害な物質で、ガラス瓶の激突地点から直線距離で8・8メートルも離れた距離で、間には船橋甲板もあるのに、○○(乗組員の実名)に酪酸が付着するのは不自然と主張する…」
「しかし、これらの主張は失当である。酪酸が強い腐食性を有する非常な危険な液体であることは明らか。飛散した甲板の塗装は変色していた」
「船上では、船首から船尾に向かって約12ノット(約6・2メートル)の風が吹いている状況で、風の影響で飛散し、船橋甲板から下の上甲板上に達することも社会通念上、合理的に理解できる…」
=(2)へ続く
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by looh8uwh65
| 2010-06-15 16:26